家づくりの最初の一歩が住宅展示場、という方は多いと思います。ただ、実際に行ってみると、何を見ればいいのか分からないまま歩いて、営業担当者の説明を聞いて、アンケートを書いて帰る。これがよくある流れです。
私は住宅の現場で施工管理をしています。ゼネコンで公共建築を14年、その後に住宅の現場という経歴です。今回は、展示場のモデルハウスで何を見て、何を聞けばいいのかを、建てる側の立場からお話しします。
まず、モデルハウスは「標準仕様」ではありません
ここが一番の前提です。

展示場のモデルハウスは、その会社が一番いい状態を見せるための建物です。ショールームなので当然のことで、悪いことではありません。ただ、「これがそのまま建つ」と思って見ると、後で金額を見て驚くことになります。
標準と違いやすいのは、こういう部分です
- 天井の高さ — 標準は2,400ミリ前後が多いのに対し、モデルハウスは2,700ミリ以上のことがあります
- 床材 — 無垢材や、幅の広い板が使われがちです
- 造作家具・建具 — テレビボードや飾り棚は、ほぼ現場で作った特注品です
- キッチン・浴室 — 最上位グレードが入っていることが多いです
- 外壁・屋根 — 意匠性の高い仕様になっています
- 敷地の広さ — 展示場の区画は広く、実際の宅地では成立しない配置もあります
建物の広さも違います。展示場のモデルハウスは40坪から60坪級が中心ですが、実際に建てられる方は30坪台が多いです。広く感じて当たり前なので、そこは差し引いて見てください。
逆に、見ても意味が薄いところ
先にお伝えしておきます。
家具・小物・照明の演出は、判断材料になりません。すべてプロのコーディネートで、引っ越し後に同じ空間を再現できる方はほとんどいません。
「おしゃれかどうか」も、あまり差が出ません。どの会社も、そこにはお金をかけています。
見るべきなのは、お金をかけて演出できない部分です。
現場を管理する立場から、ここを見てほしい
1. 窓を開けて、閉めてみる
断りを入れてからで構いません。サッシの動きの軽さ、閉めたときの手応えを確かめてください。
そのうえで、「標準仕様だと、サッシとガラスは何になりますか」と聞いてみてください。樹脂サッシなのか、アルミと樹脂の複合なのか。ガラスは2枚なのか3枚なのか。ここは後から変えられない部分なので、標準がどこかを知る意味があります。
2. 床を歩き、階段を上り下りする
歩いたときに床がたわむ感じや、きしみ音がないか。新しい建物なので、まず出ませんが、感覚を覚えておくと後で役に立ちます。
階段は、踏み面の広さと段の高さを体で確かめてください。急な階段は、若いうちは気になりませんが、何十年も使う場所です。手すりの高さも一緒に見ておくといいです。
3. コンセントとスイッチの位置を数える
モデルハウスは実際に生活しないので、コンセントが実際の暮らしより少ないこともあります。数えてみて、自分の生活に足りるかを考えてみてください。
逆に、「ここにあると便利だな」という発見もあります。写真に残しておくと、後の打ち合わせでそのまま使えます。
4. 収納は、実際に手を伸ばしてみる
収納は容量だけでなく、奥行きが大事です。深すぎる収納は、奥のものが取り出せず死蔵になります。
扉を開けて、実際に奥まで手を伸ばしてみてください。
5. 断熱の説明パネルを読む
展示場には、たいてい断熱材の実物や、性能を説明したパネルが置かれています。ここは飛ばさずに読んでください。
見るのは、断熱材の種類と厚み、サッシの仕様、換気の方式です。そして「等級◯相当」という書き方があったら、必ず追加で聞いてください。「相当」は、正式な認定を取っていないという意味です。
必ず聞いてほしい質問
遠慮する必要はありません。こう聞いてください。
- 「このモデルハウスで、標準仕様ではない部分はどこですか」
- 「同じ間取りを標準仕様で建てたら、坪単価はいくらになりますか」
- 「窓のサッシとガラスは、標準だと何になりますか」
- 「断熱材は標準だと、何をどれくらいの厚みで入れますか」
- 「この天井の高さは標準ですか」
一番大事なのは1つ目です。ここを正直に、具体的に答えてくれるかどうかで、その会社の姿勢が見えます。「ほとんど標準です」で済ませようとする場合は、もう一歩踏み込んで聞いてみてください。
予約なしで行くと、どうなるか
飛び込みでも入れますが、営業担当者が付くかどうかは、その日の混み具合次第です。週末は特に混みます。
見学の予約をしておくと、担当者が決まり、資料も用意されるので、話が具体的になります。質問をぶつけたいなら、予約したほうが確実です。
ただし、予約すると連絡先を伝えることになります。あちこちに出すと、その分だけ営業の連絡が来ます。行く会社をある程度絞ってから予約するのが、結果的にラクです。
1日に何社まわれるか
現実的には2社までだと思います。
3社を超えると、どの会社が何を言っていたか記憶が混ざります。帰ったその日のうちに、会社ごとにメモを残してください。1週間経つと、間違いなく分からなくなります。
写真については、撮っていいかを必ず先に聞いてください。撮影できない場所もあります。
行く前にやっておくといいこと
- 予算の上限を決めておく — 展示場で決めると、まず上がります
- 優先順位を3つに絞っておく — 全部は叶いません
- 候補の会社をある程度絞っておく — カタログを取り寄せて比べると、行く前に方向性が見えます
まとめ
- モデルハウスは標準仕様ではない — 天井高・床材・造作・設備はほぼ上位仕様
- 広さも違う — 展示場は40〜60坪級、実際は30坪台が中心
- 家具や小物は判断材料にならない — お金で演出できない部分を見る
- 窓・階段・収納・コンセントは体で確かめる — 後から変えにくい部分だから
- 「標準ではない部分はどこか」を必ず聞く — 答え方に会社の姿勢が出る
- 1日2社まで、その日のうちにメモ — 3社を超えると記憶が混ざる
展示場は、情報を集める場所であって、決める場所ではありません。その日に契約を迫られても、いったん持ち帰ってください。数千万円の買い物を、その場で決める理由はありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


