注文住宅を建てていると、予算は必ずと言っていいほどオーバーします。
あれもこれもと欲しくなって、気づけば当初の予算を大きく超えている。そこで「どこかを削らないと」という話になるわけですが、この「削る場所」を間違えると、後で余計にお金がかかります。
私は住宅の現場で施工管理をしていて、これまで多くの家が建つ過程を見てきました。その経験から言うと、削っていい場所と、絶対に削ってはいけない場所ははっきり分かれています。
この記事では、「ここをケチると後で余計に高くつく」という3つの場所を、理由と一緒にお話しします。逆に言えば、ここ以外は削りどころがあるということでもあります。
そもそも「ケチってはいけない」とはどういう意味か
最初にこの記事の考え方をお伝えします。
ここで言う「ケチらない方がいい」とは、最初に安く済ませると、後から余計にお金がかかったり、取り返しがつかなくなる場所のことです。
家の中には、後から変えられるものと後から変えられないものがあります。カーテンや照明、家具は後からいくらでも買い替えられます。でも、地盤や基礎や断熱材は、家が建った後に「やっぱり変えたい」と言っても現実的に無理です。
この記事で紹介する3つは、すべて後から変えられない、あるいは変えるのに莫大な費用がかかるものです。だからこそ、最初にお金をかける価値があります。
1. 住宅性能(耐震等級・長期優良住宅)
ここは、お金の話がはっきり数字で見える部分です。
耐震等級は3をおすすめします
耐震等級には1・2・3のランクがあり、数字が大きいほど強くなります。
- 耐震等級1 — 新耐震基準を満たすレベル
- 耐震等級2 — 等級1の1.25倍の強度
- 耐震等級3 — 等級1の1.5倍の強度(最高等級)
等級を上げると当然コストは上がります。それでも私が等級3をおすすめするのは、安全性だけでなく、お金の面でも回収できる可能性が高いからです。
分かりやすいのが地震保険の割引です。耐震等級によって割引率が決まっていて、等級1は10%、等級2は30%、そして等級3は50%割引になります。
地震保険は住んでいる限りずっと払い続けるものです。仮に年間4万円の保険料なら、等級3なら年2万円。これが30年続けば60万円の差になります。さらに、フラット35Sの金利引き下げが使えるケースもあります。
【重要】「耐震等級3相当」に注意してください
ここは絶対に知っておいてほしいところです。
住宅の広告などで「耐震等級3相当」という表現を見かけることがあります。これは「等級3と同じくらいの強さで設計しているけれど、正式な認定は取っていない」という意味です。
何が問題かというと、「相当」では地震保険の50%割引が受けられない可能性が非常に高いのです。保険会社は割引の適用に「住宅性能評価書」という正式な書類を求めるのが一般的だからです。
強さそのものは同等かもしれません。でも、書類がないと制度上のメリットは受けられません。ここは営業担当に「認定は取りますか?評価書は出ますか?」と、はっきり確認してください。
長期優良住宅の認定も取っておくのがおすすめ
長期優良住宅とは、国土交通省の説明を借りると「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が、その構造及び設備に講じられた優良な住宅」のことです。
認定を受けるには別途費用がかかります。それでも私がおすすめするのは、税制の優遇が大きいからです。
一番恩恵を感じやすいのが固定資産税の減額措置です。新築住宅は固定資産税が1/2に減額されるのですが、その期間が一般住宅は3年、長期優良住宅は5年になります(戸建ての場合)。
ほかにも住宅ローン減税の借入限度額が広がる、不動産取得税の控除額が大きくなるといったメリットがあります。初期費用はかかりますが、それ以上の恩恵を感じることになると思います。
なお、この減額措置は2031年3月31日までに新築されたものが対象です(制度は変わることがあるので、必ず最新の情報を確認してください)。
2. 断熱性能
ここは、この数年でルールそのものが大きく変わった部分です。順を追って説明します。
2025年4月から、断熱等級4が義務になりました
まず前提の話です。
少し前まで、住宅の断熱性能を表す「断熱等性能等級」は等級4が最高でした。ところが2022年に等級5・6・7が新しく追加され、さらに2025年4月から、すべての新築住宅で等級4以上が義務化されました。
つまり、かつての最高ランクが、今では最低ラインになったということです。
- 等級4 — 2025年4月から義務化された最低基準
- 等級5 — ZEH水準。2030年に最低基準になる見込み
- 等級6 — HEAT20のG2相当。性能とコストのバランスが良い
- 等級7 — 最高ランク(HEAT20のG3相当)
「基準を満たしています」で安心しないでください
ここが一番お伝えしたいことです。
2025年4月以降、どの住宅会社も「省エネ基準に適合しています」と言います。当たり前です。義務ですから。
つまり「基準クリア」は、もはや自慢ポイントでも何でもありません。大事なのは「等級4(最低ライン)なのか、それとも5や6を狙えるのか」という中身のほうです。
2030年には等級5が最低基準になると言われています。今から建てる家が等級4ギリギリだと、建てた瞬間から時代遅れになりかねません。予算が許すなら、等級5、できれば等級6を検討する価値は十分にあると思います。
なぜ断熱をケチってはいけないのか
断熱性能が低いと、日々の暮らしの質が確実に下がります。冬に足元が寒い、夏に二階が暑い、エアコンが効かない。しかも光熱費は住んでいる限り毎月かかり続けます。
そして何より、断熱材は後から入れ直すのが非常に難しいです。壁を壊すことになるからです。ここは最初にお金をかけるべき、典型的な場所だと言えます。
断熱材の種類はいろいろありますが、コスパの面で私が個人的におすすめしているのは硬質ウレタンフォームです。
窓は樹脂サッシを推します(我が家は違いますが)
断熱の話をするとき、意外と見落とされがちなのが窓です。
実は、家の中で熱が一番出入りするのは壁ではなく窓です。どれだけ壁の断熱材を良くしても、窓が弱いとそこから熱が逃げていきます。窓は断熱の「穴」になりやすいということです。
サッシは大きく分けて3種類あります。
- アルミサッシ — 安いが、断熱性能は低い
- アルミ樹脂複合サッシ — 外側がアルミ、内側が樹脂。価格と性能のバランス型
- 樹脂サッシ — 断熱性能が高い。その分コストは上がる
正直にお話しすると、我が家はアルミ樹脂複合サッシを採用しました。当時の判断として悪かったとは思っていませんし、今でも十分におすすめできる選択肢です。
ただ、性能で言えば樹脂サッシのほうが上です。なので、これから建てる方には私は樹脂サッシを推します。
理由は2つあります。1つは、窓は後から交換するのが本当に大変だからです。もう1つは、断熱等級5や6を狙うとき、窓の性能がボトルネックになりやすいから。壁の断熱材だけ良くしても、窓で足を引っ張られると等級が上がりません。
どの断熱材・どのサッシが最適かは、目指す等級と地域によっても変わります。設計士とよく相談してください。
3. 外壁材・屋根材
外壁材と屋根材も、あまりにグレードを下げると、後々のメンテナンス費用のほうが高くつくことがあります。
外壁も屋根も、10年20年経つと必ず手入れが必要になります。その時の足場代を含めた工事費は決して安くありません。最初に10万円ケチった結果、10年後に50万円多く払うということが普通に起こります。
ただし、ここは家のデザイン性にも大きく関わる部分です。性能だけで決められないので、設計士とよく相談してください。
ちなみに我が家は
参考までに、我が家の選択はこうです。
- 外壁材 — 窯業系サイディング
- 屋根材 — 樹脂混入繊維補強軽量セメント瓦
コスパ・メンテナンス性・デザイン性の3つを考えて決めました。
まとめ
今回は、家づくりでケチらないほうがいい3つの内容を紹介しました。
- 住宅性能 — 耐震等級3で地震保険50%割引。「3相当」では割引が効かないので注意
- 断熱性能 — 2025年から等級4は義務(=最低ライン)。5〜6を狙う価値あり。窓は樹脂サッシ推奨
- 外壁・屋根 — 最初にケチるとメンテ費用で逆転される
建築材料は、物にもよりますが値段が高いほど性能が良くなるのが基本です。(どんな商品にも言えることかもしれませんが(笑))
とはいえ、高くて良いものばかり選んでいたら予算はいくらあっても足りません。大事なのは、自分たちに合ったちょうど良い性能を選ぶことです。
これがとーーーっても難しいのですが、後悔先に立たずということわざもあります。一生に一度の大きな買い物ですから、後悔のないようにしましょう。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました。



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